デザイン 加藤勝也(本学グラフィックデザイン学科准教授)
瀧口修造(1903–1979)は、詩作、シュルレアリスム研究、前衛美術評論 について1920 年代後半から先鋭的な活動を展開し、大きな足跡を残しま
した。第二次大戦後には、美術,写真,音楽,舞踏,文学など多くの分 野で若い芸術家たち,新進評論家たちに影響を与え,メンターのような役割をにないながら多数の評論を残しました。
瀧口に私淑していた東野芳明(1930–2005,本学名誉教授)が没後に 彼の蔵書を夫人から引き受け,本学の上野毛図書館にて瀧口修造文庫が 発足(1986)しました。現在はアートアーカイヴセンターが引き継いでいます。 瀧口が座右に置いた洋書約2,500冊,和書約8,000点,和洋雑誌3,000 点のほか,各美術館等の会議資料,千円札裁判関連資料,1950–70 年 代の展示・公演ポスター,執筆参考資料,原稿やメモ,書簡,そして瀧口 の愛用品,デカルコマニーとスケッチブックを中心とする瀧口自身のペーパー ワーク作品など,多様な資料を有します。
[会期]2024年6月19日(水)-7月20日(土)
※7月14日(日)はオープンキャンパスのため10:00-16:00まで開館いたします。
[休館]日曜日/7月15日(月)
[時間]午前10時-午後5時
[会場]多摩美術大学八王子キャンパス アートテーク2F AACギャラリー|入場無料
[主催]多摩美術大学アートアーカイヴセンター
[監修]多摩美術大学共同研究会「アートアーカイヴセンター所蔵資料の授業利用の課題と実践」
光田由里 ー 多摩美術大学 アートアーカイヴセンター所長、大学院教授
大島成己 ー 多摩美術大学 絵画学科版画専攻 教授
加藤勝也 ー 多摩美術大学 グラフィックデザイン学科 教授
高橋庸平 ー 多摩美術大学 グラフィックデザイン学科 教授
古谷博子 ー 多摩美術大学 絵画学科版画専攻 教授
矢野英樹 ー 多摩美術大学 情報デザイン学科 准教授
アートアーカイヴセンター所蔵瀧口修造文庫による八王子キャンパスでの初め ての展示として「瀧口修造 I ART BOOK」展を開催いたします。
1930 年代,パリを中心に世界各地にひろがっていたシュルレアリスム活 動は,文通によってネットワークを形成し,詩集や画集を贈りあってその成果 を共有していました。その輪の中にいた瀧口は敗戦後もこの体験を引き継ぐ
ように,マルセル・デュシャン,ブルーノ・ムナーリら欧米の美術家,デザイナー, 詩人たちと交流を続け,彼らの活動を紹介しました。こうした著作が日本の 新人芸術家たちに与えた影響は大きく,瀧口は彼らの活動を見守る役割も になっていたのです。下落合の瀧口の書斎には,世界各国の芸術家たちか
ら著書,特製本,オブジェなどが献呈され,集積されました。 詩人・北園克衛(1902–1978),現代音楽評論・秋山邦晴(1929–1996), 写 真 家・安 齊 重 男(1939–2020),美 術 評 論・東 野 芳 明(1930–2005)ら,
本センターが所蔵する資料体関係者たちと,瀧口はそれぞれに深い交流がありました。 北園とは シュルレアリスム 研 究 の 同 世 代詩人として長く交友し, 秋山や東野ら後輩評論家はそのデビューから支援して前衛芸術の場にともに 立ち会いました。とくに東野とはマルセル・デュシャン研究を中心に密接に交 流しています。安齊は現代美術の現場で,瀧口や東野のポートレートを多数 撮影しています。
本展では,交流の中で瀧口のもとに集まった貴重なART BOOKの数々 を5名の本学教員がそれぞれの視点から選び出し,紹介する機会です。サイン本,豪華本,共著の詩画集など,お楽しみ下さい。
光田由里(多摩美術大学アートアーカイヴセンター所長/大学院教授)